01.so,then(僕らの幻想)
未知魅知で同タイトルのCDを作ろうとしたときに最初に書いた曲。なのでルーツ的には#1のtr.2より早い。当時私はまだ京都に住んでいたのだけれど、当時、知人がそれなりに居て、イベントの度に行き来していた関東方面の「世紀末感」みたいなの、凄かった。あのときまで、アキバの夜はもう少し明るかった。
あの日々に見た終末の向こうに我々は生きているのであってそれは本当にすごいことなんだと思う。タイトルは「さよなら」で始まり、「さよなら」で終わるCDにしたかった名残り。名残り、というのは最後の最後でこの曲順になったからである。
02.ロア
菊壱さんの秘封倶楽部都市伝説合同に寄稿。都市伝説からちょっと跳躍して、「都市と伝説の接続性」みたいな。音楽CDシリーズと本編の幻想郷の二重性がすごい好きで、中でも『蓬莱人形』は本編、旧作、秘封世界の三つの接点となる作品だと捉えていて、『蓬莱伝説』は「第三の壁のこちら側から観測した幻想郷」みたいなイメージがある。ものすごい幻視力高いなあって思う。
アレンジボーカル曲の世界観としては、ハーラン・エリスンの「名前のない土地」が元ネタ。読み返してこれは秘封だ!!!と思った勢いで作った感。なんだろう、ロマンティックラブイデオロギーというよりはプラトンの「饗宴」というか。#1のジャケットの”Escape Inside(逃亡は内側へ)”も、この作品ギミックの引用である。どんだけ好きなんだっていう。あと私の中でBL秘封と百合秘封があるんだけどこの曲は完全に前者。
再録でアレンジに手を入れながらイメージしていたのは、卯月秋千さんの「ラブリィ≒イコール」。確か、合同誌とリリースイベントが一緒だったのかな。CD-R盤収録に際してミックスをかなりやりなおしているのだけれど、かなりイメージを持って行かれていた。こないだの東京秘封で再販掛かったらしいのでみんな読むといいよ。
奇数拍子の中でも、五拍子は「あかいくつ」のダンスなのである。終わらない渇望と憧れ。
03.あした行く空
『僕らの幻想』とほぼ同時期に作ったアレンジのver.3くらい。秘封アレンジを肴にリアルタイムな感情を表現する系。最初はもっとバラードっぽい感じだったのが二転三転して保刈先生的なエレクトロニカに。コンプの設定でエレピの発音が引っかかってしまったのは仕様ってことに…
ハットのシーケンスの高音の潰れ方が気持ちよくてお気に入り。
04.D.IstPIaNIC
制作ペースが燕石博物誌に全く追いついていなかったのですが、オサレ劇伴ぽいアレンジを一曲入れたくて、燕石で個人的に一番刺さってた『禁忌の膜壁』から。説明事項はとくにないです。あと、このときCharlotteのサントラに嵌まってたのでアレンジの元ネタはあのへん、というか多分持ってるひとにはわかる。
タイトルを先に決めたので、歪みピアノ中心にしたかった。一応、音作りとして歪みはいれたのだけれど、あまり露骨ではないかも。
05.瞬息
宇佐見菫子を語るとき、私は「あの子の存在によって科学世紀とこの世界が接続された」というのを毎度毎度力説することになるわけです。尊い。女子高生尊い。ボーカルアレンジを作ってみたいんだけど、自分の中で尊すぎて曲が書けない。「秘封は宗教」とは言ったものの、蓮子とメリーは拝みはしないけど菫子ちゃんはたぶん拝める。
06.パラード
プロット交換合同、「幻想で逢いたい」の海綿さんver.に寄せた曲。ちなみに本編DL版にはこの5倍くらいの文量の解説がある。まぁ持ってる人の特権だと思うので端折っていきます。
和紀さんの作風の硬質な耽美性と海綿さんの密室めいた耽美性、どちらも方向性は違えど非常に耽美だと思うんですが、この作品についていうと、両者があわさって非常に超越性、「SF」感の強い物語になっている、ような。
hakuさんの提出がめっちゃ早かったのでジムノペディの曲は聴いてたり、あと、海綿さんの他作品のモチーフもチラホラと拾っている感じで。全部知ってる人は「ん、これかな?」みたいに勘ぐっていただけると。
中間部はエリック・サティの「パラード」の引用。他にもフレーズの引用とか。ジムノペディからのサティ繋がりなんだけど、「パラード(こっちの原作はバレエ)」は全体的に東方を連想させる作品だと思うのでお勧めです。映像作品が出ている。
07.待ち人はかく語りき
神霊廟発表のときに勢いで作ったアレンジですが一晩じゃ終わらなくてジェバンニはできなかった。この頃に比べるとだいぶんエレクトロニカ的な音作りに慣れました。
妖から入ったので、幽々子さまは愛着の強いキャラクタというか人気投票で毎回迷う人なんですが、父性への憧憬、背負ったストーリーの全てが「彼女の中で既に失われている」という所に強く惹かれる。幽香さんとはやっぱりルーツを同一にしているのではないかとも。
昔作った「眠れる森」とかもっかい作りたい。
08.わたしの名前はディスノミア
やっとフルサイズ化できた!! 何年越しだ!! 劇団文七さんの『用明二年のノブレス・オブリージュ』に寄せた4曲の中で、個人的に一番気に入ってるのは実は霊の曲なんですが、一曲フル化するならこれかなと。
第一巻にあたる『神の巻』は壁抜けの邪仙こと青娥娘々が、元ネタの原作・「聊斎志異」ベースの「女の一生」を生きた果てに、邪仙として中国を離れるまでの物語で。私の中で神霊廟の全体テーマは「デザイアドライブ」なので、一曲めは「古きユアンシェン」よりこっちで、みたいな。
ノブレスは大作なのでみんな読もう。
イントロの元ネタは、絵師のキタユキさんリクエストだったCOCKROACHの。どの曲かは好きな人は適当に探してね感。当時コンロコンロ言われてたハイハットを忠実再現。
度々、ボーカルサントラ再販ないんですかという要望をいただくのと、今回、音が…というかボーカル録りでコケたのでリファイン版出すかもしれない。あと野田さんとキタユキさんとモイモイさんにまだ報告してないので早く聴かせたい。
09.夏が終わるまで
永遠と須臾、アイオンとプランク。
すんごい好きアレンジなんですが、ギターがんばって打ち込んだけどやっぱ生ですかね的な…
あとこれもライブ向きな感じはします。いずれやりたいな。
10.good bye, and
さよならのつづき。
タイトルはtr.01で説明したのと同じ理由で決めたのですが、アルバム通して「さよなら」を言い過ぎな感はあるし、誰に向けて言ってるのかもよくわからない。
11.眠り猫のサーカス
二枚目の(秘封)アレンジCDだった「ロストインアムネシア」からのリアレンジを「Puzzle for m to M」というインストCDにショートサイズ収録していた…のをフル化したもの。
ちなみにCDのテーマはChangeability of Strange Dream、mをMへ、悪夢を吉夢へ。
曲順で悩んだんだけど、今回はポップスで、静ではなく動で終わらせたかったのでこの曲順で。死を孕む永遠を見据えながら、わたしたちは今このときの幸福を生きる。徹底的に軽薄かつ軽率かつ勇猛無謀な感じで終わりたかったので、これが二枚の最後ということに。おしまい、おしまい、そして世界はつづく。